産業医としての勤務先でのこと。
保健師さんから、
「1週間前に休職の診断書をもらってきたけれど、勤務されているみたいなんです」という報告を受けて
「えっ!?勤務していて大丈夫なの!?」ということで、
その社員さんと面談になりました。
1年位前にも面談をしたことのある社員さんで、
当時から、業務量の多さや人手不足を訴えていましたが、
勤務はこなしていたようです。
2か月前から同部署の他の社員さんが休職や退職をされてさらに人手不足となり、
一気に負荷がかかってしまったようでした。
2週間前に友人から「いつもと違う、反応が鈍い」と指摘され、
1週間前から不眠やアタマが思うように働かないと自覚するようになって
心療内科を受診したようで、
「医師からはまず休みましょう、と言われましたが、
私は眠れれば大丈夫だと思って眠剤をもらえればよかったので、
診断書が出されたけれど会社には提出していません」
私が休んだら、仕事がまわらなくなるし、周りに負担をかけることになるし、
何よりキャリアに傷がついてしまうので・・・休職したら間違いなく傷がつきます」
とお話しされました。
それを聴いて、ふっと
「キャリアって本当に傷がつくものなんだろうか」と感じました。
私の中には、キャリアというものに対して
傷がつく、つかないという見方がないということなんでしょうね。
(そのことに正解や不正解はありません)
診察に訪れる患者さんにも
同じようにお考えの方が多くいらっしゃいます。
キャリアが傷がつくことを恐れる気持ちは理解をしています。
とても大事ではありますが
からだやこころがヘトヘトになってしまうことを恐れる気持ちも
同じように大事です。
からだが元気ならやり直しはできるし、大抵のことは何とかなります。
でも、からだが傷ついたり病気になったりしてしまったら
キャリアに傷がつくどころでは済まないかもしれません。
「休職する前は休むことが怖かったけれど、でも、思い切って休んでよかった」
休職してしっかりとからだとこころを整えて復職した患者さんから
そのような言葉が、本当に自然と出てくることが多いんですよ。
アタマが必死に休んじゃダメ、と言っていても
胸の奥の方で休みたいと感じていることがあったら、
それはからだからのサインです。
からだの声に従って、まずは誰かに相談してみてください。
クリニックでは、
休みたいけど休めない時も、休むのが怖い時も、
どうしたらよいかを一緒に考えます。