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適応障害になりやすい方、療養中の注意点

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■適応障害とは?

適応障害は、何らかのストレスによって社会生活や日常活動への適応が困難になり、心身にさまざまな症状が現れる状態です。

適応障害の症状

適応障害における症状は、その人の性格、環境、経験するストレスの種類により異なりますが、主に精神的、身体的、行動的な症状に分類されます。症状は単独で現れることもありますし、複数が組み合わさって現れることもあります。
精神的な症状としては、不安、憂鬱、易怒性、意欲の低下、涙もろさが挙げられます。
身体的な症状には、倦怠感、めまい、動悸、頭痛、腹痛、手足のしびれ、下痢、食欲不振、不眠などがあります。
行動的な症状としては、暴飲暴食、無計画な行動、無断欠勤や周囲との衝突が増えるなど、通常と異なる行動が見られることがあります。
多くのケースでは、ストレス源から離れることで症状が軽減されます。たとえば、仕事がストレスの源の場合、平日は憂うつな気分が続くが、休日には改善されることがあります。ストレスから解放されると、適応障害の症状は通常、半年程度で改善することが多いです。

うつ病との違いは?

適応障害の場合、ストレス源から距離を置くことによって症状が和らぐことが多いですが、これによって自己非難が減り、時には攻撃的な行動や発言が見られることもあります。対照的に、うつ病はストレスの原因が明確でない場合や、ストレスから離れても症状が軽くならないという特徴があります。
うつ病でも適応障害でも、ストレスから解放されないことで無力感が持続したり、自分を過度に責めたりすることがあります。更に、自分が取り返しのつかないことをしたという誤解が修正されないまま深刻化することもあるのです。
適応障害とうつ病は症状が似ているため、診断が困難な場合もあります。そのため、適応障害と診断された後、治療を進める中でうつ病へと診断が変更されることもあります。

どんな人がなりやすいですか?

以下の項目に当てはまるような方は、適応障害になりやすい傾向があります。
■責任感が強くて何事も真面目に取り組む
■◯◯すべきという傾向があり融通がきかない
■他者からの評価が気になってしまう
■我慢しやすい、ストレスを発散する方法が少ない
■繊細、かつ敏感である
■人から頼まれたら断りにくい
■相談できるような相手があまりいない
■人の気持ちや周りの状況を上手につかみにくい

適応障害かもと思ったら

重要なのは、1人で問題を抱え込まないことです。ストレスに対応できない状態が長引くと、日常生活全体に悪影響を及ぼすことがあり、結果的には深刻な問題に発展する可能性もあります。最初のステップとして、周りの人たちに相談してみることが有効です。もし相談が難しい場合や、話を聞いてもらえる相手がいない場合は、専門の医療機関を受診することを検討してみましょう。

環境調整

■休職
仕事や職場環境が適応障害を引き起こしている場合、しばらく職場から離れることで症状が軽減されることがあります。しかし、ただの1~2日ではなく、通常は1ヶ月単位での休職が必要となることが多いです。復職の適切なタイミングや復職時の注意点は、医師との診察時に相談しながら段階を追って決めると良いでしょう。また、休職からの復職に対して不安がある場合も、遠慮なくご相談ください。

■部署の異動
休職に至らない場合でも、職場での相談を通じて部署変更を行うことで、仕事の内容や人間関係の変化が症状の改善につながることがあります。実際に部署変更が実施可能かは、所属する会社や組織の状況によります。特に症状が顕著な場合、このような変更が逆に不安や焦りを増大させることがありますので、変更前には勤務先の上司や人事部との相談を、医師のアドバイスを得ながら慎重に行うことが重要です。

■退職・転職
休職や部署異動で症状が改善されない場合、職場環境が原因であれば転職も選択肢の一つです。
職種によって必要なスキルや業務の進め方が異なりますが、同一職種内でも具体的な業務内容は様々です。例えばスポーツの場であれば、選手、コーチ、監督と役割は異なりますし、芸術分野でも多様な専門職が存在します。新たな職場では、オリエンテーション後に具体的な業務内容を学んでいくのが普通です。しかし、雇用者側が未契約の人に全業務内容を詳細に説明することは難しく、ミスマッチの問題を完全に解消することは困難です。
退職や転職を考える際は、家族や信頼できる人々、そして主治医と十分な相談を重ね、新しい職場のメリットとデメリットを理解した上で決定することが重要です。

■その他・休職中の注意点など
適応障害は昇進や進学、結婚、出産、引っ越しなど、望んだ変化でも発症のきっかけになることがあります。良い出来事でも、それがストレスになることがあります。実際、回復後に患者さんがこれを発症の契機と語ることは珍しくありません。環境変化に対する事前の期待と実際の体験、その後の受け止め方にギャップがあると、適応障害が起こりやすいです。

適応障害への理解は非常に重要です。周囲が「希望通りだったのでは?」や「誰もが経験する」と思い込むことは、症状を悪化させかねません。医師が療養を勧めたとき、不安を感じたり、罪悪感を抱く患者さんもいます。
たとえば、整形外科で「骨折をしているから、安静に」と言われたら、多くの人がその必要性を理解しますが、適応障害も休息が必要な時は同じです。ストレスが脳に微小な炎症を引き起こすという研究があり、気合だけで治せるものではありません。
患者さん自身も早く元の生活に戻りたいと焦ることもありますが、周囲がそれに同調することは良くありません。周囲の方は「○○さんは限界まで頑張ってしまった」と理解し、冷静に対応すること、そして休息が取れる環境を整えることが重要です。

職場復帰の目安

適応障害での休職期間には大きな個人差がありますが、一般的には1~3ヶ月程度が目安とされています。ただし、これはあくまでも平均的な期間であり、実際には症状の重さや回復の進み具合によって大きく異なることがあります。
例えば、軽度の適応障害の場合、休職期間が2週間から1ヶ月程度で回復に向かうケースもあります。しかし、重度の適応障害の場合は、3ヶ月以上の長期的な休職が必要となる場合があります。これは、個々のストレス耐性や回復力、さらには職場環境やサポート体制などの要因によって左右されるため、一律に休職期間を定めることは難しいと言えます。
また、適応障害から回復するためには、十分な時間を確保することが不可欠です。無理に早期復職を目指すことは、再び症状を悪化させるリスクを伴います。そのため、自分自身の状態を正しく把握し、医師や専門家の意見を参考にしながら、焦らずに回復へ向けて取り組むことが重要です。
休職中は、まず心身をリセットし、ストレス要因を少しずつ減らしていくことが求められます。たとえば、適度な運動や十分な休息を心がけることが有効です。また、必要であれば心理療法やカウンセリングを取り入れることも回復を早める助けになります。


さらに、職場復帰を目指す際には、無理のないステップを踏むことが大切です。例えば、短時間勤務や職場環境の調整などを検討することで、スムーズな復職を実現できます。復職後も、引き続き自分のペースを大切にし、過度なプレッシャーを避けるよう努めることが推奨されます。
最も大切なのは、心身の健康を取り戻すことです。職場復帰を焦るよりも、しっかりと自分のペースで回復に集中することで、長期的な健康と安定を手に入れることができます。

 

監修:こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)