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自律神経失調症の原因とストレスとの関連性

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症状や疾患からみる人間の精神のはたらき その1

今回は、みなさんも耳にすることのある「自律神経」について、みていきましょう。

 

■自律神経失調症とは何か?


自律神経失調症は、生活の乱れや過度なストレスが自律神経のバランスを崩し、さまざまな健康問題を引き起こす状態です。
症状の現れ方は人それぞれで、症状の度合いや体に現れる場所も異なります。また、他の病気と同時に現れることがあり、体質的に似たような症状が出やすい人もいるため、自律神経失調症の診断は困難であるとされています。
様々な検査をしても明確な異常が確認できず、症状があるにもかかわらず原因が特定できない場合、「原因不明」や「精神的なものではない」とされることがあり、その結果、自律神経失調症と診断されることもあります。



☆ここからPOINT☆

「自律神経失調症」は俗称であって、正式な病名ではありません。

人間のからだは、からだの外(外界)の環境に対して、安定した状態を保とうとする仕組み、「恒常性」を持っています。例えば、体温。気温が高い環境の中では体温が上がらないように汗をかいて下げようとするし、気温が低い中ではブルっと身震いし筋肉を動かして体温を上げようとします。そうやって、からだが一番効率よく機能する37℃前後になるように調整しているのです。

このとき、みなさんは「暑い!」「寒い!」と感じることはあっても、体温を調節しようと意識して汗をかいたり身震いしたりしているわけではないですよね。「勝手に」汗が出て、「意図せず」ブルっと震える。この「意識せず」「勝手に」「意図せず」が自律神経のはたらきそのもの、本質ということです。

ですから、外界の環境に適応できない状況、からだがついていけていない状態は、広義にはすべて自律神経失調状態であると言えます。外界からの刺激が強い時、ストレス下にある時や、体力低下、疲労でもそれは起こりますから、すべてが病気とは限りませんが、自律神経失調状態が症状として捉えられると自律神経失調症ということになるでしょう。

この話をするときに私がいつも思うのは、自律神経が働くことによって、からだは「一瞬一瞬、その環境において常にベストを尽くしている」ということです。生命活動が維持されている、いま生きているだけで、みなさんのからだは常にめちゃくちゃがんばっている、ということなんです。これはものすごいことで、そのようなからだをぜひ労って大切にしていただきたいです。

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■自律神経とストレスの関係性


自律神経は、活動的な交感神経とリラックス時に活発な副交感神経の二つに分けられます。これらの神経は、一見対照的な役割を持ちつつも、互いに補い合いながら体のさまざまな機能を調整します。例えば、交感神経が活発になると心拍数が上昇し、反対に副交感神経が活発になると心拍数が低下します。このように自律神経は心臓だけでなく、体全体に影響を及ぼします。

大きなストレスがかかると交感神経が過剰に活動し、そのバランスが崩れることがあります。このため、重要なイベントの前に眠れなくなる、睡眠が浅くなるなどの症状が現れることがあります。これは緊張状態により交感神経が優位になり、リラックス状態であるべき副交感神経の働きが弱まるためです。通常は、自律神経のバランスが自然と整い、元の状態に戻りますが、うまく切り替わらない場合は脳や体が持続的に活動状態にあり、リラックスできない「ナーバスな状態」が続くことになります。これが、「疲れが取れない」「神経質になる」といった状態を引き起こす原因となります。

 

☆ここからPOINT☆

心身が「緊張」した時に優位になるのが交感神経です。自分のからだを守らなくては!とアタマが感じると交感神経が活性化し、「闘争」や「逃走」ができるように、心拍数が上げて血流を増加したり、呼吸を速めて酸素を取り込もうとしたり、物をつかみやすいように手に汗をかいたり、危機に対処できるからだの状態にします。

一方、「リラックス」した時に優位になるのが副交感神経です。交感神経の興奮が行き過ぎないようにブレーキをかけることとともに、活動が続くと体は消耗しますから、必要なメンテナンスができるようなからだの状態にします。睡眠の質があがり、消化管運動が活発になり、深い呼吸によって十分な酸素を入れて代謝を整えます。

交感神経と副交感神経のモードチェンジにも体力や気力が必要です。疲れているのになかなか眠れない、朝からだが起きにくいと感じるのは、このモードチェンジに時間がかかっていることが考えられます。元気な時は、電気のスイッチのように、パチンと切り替えられるものが、疲労が蓄積してくると、調光のスイッチのようにゆっくりとONになってゆっくりとOFFになる、といったイメージです。このように、「いま、この瞬間に適したからだにできない」「環境とからだが一致しない」状態が自律神経失調状態といえます。

緊張した時に優位になる交感神経、リラックスした時に優位になる副交感神経、これらのバランスで、からだの状態が成り立っているわけですが、天秤のような「どちらが優位か」というバランスのとり方だけではなく、交感神経と副交感神経がどちらもしっかりと活性化している、というバランスのとり方もあるようです。すなわち、緊張とリラックスがどちらも適度にある状態、実はこのような時にからだは一番パフォーマンスが上がるそうですよ。

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■他にもいろいろな原因がある


自律神経失調症の原因は多岐にわたります。例えば、生活リズムの不規則さが原因で症状が出る方もいれば、体質的に自律神経が不安定になりやすい方もいます。また、ストレスの感じ方には個人差があり、同じ状況でもストレスを感じる人と感じない人がいます。これは、その人の置かれた環境との相性が影響していることが多いです。ストレスを多く感じる人は、自律神経失調症の症状を示すことがあります。また、女性ホルモンの変動が症状に影響を与えることも知られています。このように、自律神経失調症の原因は様々であり、どの因子が影響しているのかを特定し、それに適した対処法を見つけることが大切です。

 

☆ここからPOINT☆

からだの不具合や体調変化、自覚する症状が生じた時に、その要因としてチェックするとよいのは、以下の3つです。

身体因: 身体(肉体)の何らかの要因(疾患、疲労、ホルモンバランス、体質、その他)

外因 : 環境(天候や気圧など物理的、化学的要因も含む) 人間関係

心因 : 物事の受け止め方や考え方(認知など)、性格など

自律神経失調状態に陥るときは、心身の緊張もしくは疲労があるときが多いので、自分にとって体力や気力を消耗する要因は何だろうか、と考えてみるとよいでしょう。心理的な要因に意識が向きがちですが、気圧や天候の要因によって体力を消耗している結果、脳の働きが低下して思考力が落ちてしまう、ということもあり、すべてが心因とは限らないものです。

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■自律神経失調状態の症状


症状は人によって異なるため、自律神経失調症が原因で体調が崩れている可能性があります。また、他の病気との併発も考えられるため、正確な診断が必要です。自身の自律神経の状況を理解するために、以下のセルフチェックリストをご活用ください
 疲れやすい
 寝ても疲れがとれにくい
 胸がどきどきする
 頭が締め付けられるような感じがする
 手足が冷える
 肩などの筋肉が凝りやすい
 むくみやすい
 胸がドキドキしやすい
 気が散りやすい
 特に理由なくイライラしやすい
 便秘または下痢になりやすい
など
上記のような症状がいくつか当てはまり、それが持続している場合、自律神経が乱れている可能性があります。また、症状が常に同じでなくても、時々便秘になる、時々肩こりがひどくなるなど、異なる症状が現れることがあっても、これらが頻繁に起こり、長期間にわたって続いている場合も、自律神経の乱れが原因かもしれません。これらの症状が持続的に強く表れていると、自律神経失調症と診断されることもあります。


■自律神経失調症に対する治療について


自律神経失調症の治療には薬物療法や心理療法が基本です。薬物療法では、患者の具体的な症状に合わせて治療法が決定されます。例えば、更年期障害の症状がある場合には、婦人科で処方されるホルモン剤の使用が考慮されることもあります。この治療が適切であれば、症状の徐々な改善が見込めます。
また、自律神経が関連していると思われる身体的な疾患をまず疑うことが重要です。例えば、心臓疾患や腸の病気などが原因で自覚症状が出る場合があります。「理由なくドキドキする」という症状が実は心臓疾患の一つである不整脈から来ていたり、頻繁な下痢や便秘が腸の問題であることもあります。
それにも関わらず、身体的な疾患が見つからず、治療後も不安や緊張の症状が持続する場合は、心療内科やメンタルクリニックで適切な薬物治療を受けることが必要です。ぞのため、最初は具体的な症状に応じた専門科を受診し、それでもなお自律神経が関係するような上記症状が続く場合は、心療内科やメンタルクリニックでの相談を検討することをお勧めします。

 

☆ここからPOINT☆

自律神経失調状態でご相談に来られる方の多くに、「慢性的な緊張」「疲労の蓄積」「体力の低下(体力と気力のアンバランス)」がみられます。まずは、これらの状態がないかどうか自分のからだと向き合ってみることが、改善のヒントになります。自分のからだの状態を認識し、それに対しどんなケアをしたらよいかを考えましょう。何をしたらよいかわからない場合は、とりあえず、「からだが気持ちよいと感じること」をゆったりとした環境でやってみてください。それでも思うようにいかない場合は、医療機関に相談してみましょう。

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■自律神経失調症とうつ病について


さまざまな体調不良が自律神経の乱れによって引き起こされることが知られています。そして、その背後にうつ病が潜んでいる場合もあります。
うつ病はストレスとの密接な関連がある病気であり、精神的な面だけでなく身体的な面にも深刻な影響を及ぼす自律神経失調症とうつ病の関係性についてご説明します。

 

★うつ病の症状


うつ病は、遺伝的な体質や環境要因を背景に、主にストレスが引き金となって発症することが多い疾患です。この病気によって、自律神経の働きが乱れ、それが原因となってさまざまな身体症状が現れることもあります。さらに、症状の現れ方には個人差が大きいのが特徴です。
精神的な症状が顕著で、長期間にわたって続くことがうつ病の大きな特徴です。例えば、朝に気分が特に落ち込む人や、夜に強い不安を感じる人など、症状の現れ方は人それぞれです。また、うつ病は診断基準や治療法が明確に定められている点も特徴的です。
精神症状が強いため、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。

 

★自律神経失調症とうつ病の関連性と特徴


自律神経失調症とうつ病は、どちらも症状が時間や環境によって変化しやすいという共通点があります。たとえば、仕事の日に調子が悪くなる一方で、休日に体調を崩すといったケースが見られることがあります。
特にうつ病では、精神的な症状が主であるものの、自律神経の乱れを引き起こし、身体症状が現れることもあります。このような場合、自律神経失調症の原因がうつ病にあることも考えられます。
一方で、自律神経失調症からうつ病へと進行するケースも報告されています。このように両者は密接に関連しており、適切な診断と治療が必要です。

 

☆ここからPOINT☆

うつ病と診断されるような症状や状態においては、脳の疲労が顕著で脳機能が低下していることから、自律神経失調状態はほぼ100%存在しているといっても過言ではありません。大事なことは、自律神経失調症かうつ病か、といった診断にこだわることではなく、いま、からだやこころがどのような状態になっていて、何をすればよいのか、ということに意識を向けることです。たくさんスマホを使って「充電してください」というアラートが出たら使うのをやめて充電するのと同じように、疲れきってしまったからだやこころを休めて、体力や気力を「充電」してください。
一方、自律神経失調状態がある場合やきたしやすい方は、脳の疲労をきたしやすいことが多く、うつになりやすい傾向もあります。この場合は、からだを整える、じょうぶなからだづくりをすることがうつの予防にもつながります。

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監修(ここからPOINT記載):こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)