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転換性障害とは

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■転換性障害とは?

転換性障害はかつて「ヒステリー」と呼ばれていた疾患で、今日では身体表現性障害の一種として分類されます。この障害は、心理的または社会的な耐え難いストレスが原因で、明確な身体的病理がないにも関わらず、吐き気や痛み、しびれなどの身体的な症状が表れると考えられています。さらに、視力喪失、聴覚障害、または嗅覚の異常など、感覚的な問題を訴えることもあります。

 

転換性障害と解離性障害

転換性障害と解離性障害は、いずれも強い心理的または社会的ストレスが引き金となり、さまざまな症状が生じる点で共通しています。転換性障害では主に身体的症状が、解離性障害では主に精神的な症状が表れるとされていますが、患者さんによっては身体的な症状と精神的な症状が交互に現れることも珍しくありません。このような事実を踏まえ、国際的な診断基準であるICD-10ではこれらを同一の病名として扱っています。

転換性障害の症状

転換性障害の症状は、大きく分けて「運動」「感覚」「発作」に分けることができます。

運動障害

■力が抜けて歩けなくなる

■手足が震える

■手足が痺れる

■手が上がらない

■物を落とす(上手く力が入らず握れなくなる)

■立ち上がれなくなる

■顔や体が勝手に動く

■上手くものを飲み込めない

■尿が出ない(排尿困難)
など

感覚障害

■目が見えなくなる

■物が二重に見える

■臭いが分からない

■耳が聞こえない

■味が分からない

■痛みを感じない

■声が出ない

■ろれつが回らない

■喉が詰まったような感じがする

など

発作症状

■痙攣(けいれん)のような症状がある

など

 

転換性障害の原因

転換性障害は、心理的あるいは社会的な耐え難い不安やストレスが原因で発症するとされています。これらのストレスが、無意識のうちに内心の葛藤や抑圧を生じさせ、結果として身体的症状として表れると考えられています。また、幼少期の虐待やネグレクト(育児放棄)などの不適切な養育が影響を及ぼすとされることもありますが、そうした背景が明確でない場合にも症状が現れることがあります。

この分野の研究は現在も進行中で、感情や情動の調整機能に関わる脳の変化が関与しているとの研究結果が示されることもありますが、その詳細についてはさらなる調査と分析が必要とされています。

転換性障害の発症年齢・性別は?

転換性障害は、10歳から35歳頃に発症しやすく、特に女性に多いことが特徴です。

 

転換性障害の診断基準

問診を通じて症状を詳しく理解した後、様々な検査を用いて体の病気が原因でないことを確認します。これらの検査で身体的な病気が見つからない場合、転換性障害の可能性を考慮に入れます。また、一部の患者さんでは、他の精神疾患との合併が見られることもありますので、ストレス関連の精神疾患、特にうつ病などが併発していないかも同時に調べます。

転換性障害と間違いやすい病気

転換性障害は、身体的な症状が現れるにもかかわらず、医学的な原因が見つからない心因性の疾患です。この疾患は、他の病気と誤認されることが少なくありません。特に神経疾患を含む身体疾患が転換性障害と混同されるケースがあります。一見すると転換性障害のように見える場合でも、数年後に身体疾患が発見されることがあるため、診断の際には慎重な対応が求められます。そのため、まずは詳細な検査を受け、身体的な異常がないか確認することが重要です。

一方で、「自分は身体の病気である」と思い込むあまり、精神科での治療を避けてしまう人もいます。このような場合、適切な治療を受けるタイミングを逃してしまい、症状が悪化する可能性もあります。身体の主治医と精神科医が連携し、患者さんが必要な治療をスムーズに受けられるようにすることが重要です。

転換性障害の治療方法

転換性障害の治療では、まず併発している可能性のある他の精神疾患に対する治療を行います。精神的な不調があると、ご本人が考えや感情、行動をうまく調整できず、その結果としてストレスがさらに増加することが多いためです。当院では、これらの併存疾患の治療を優先し、転換性障害の症状に対しては、心理療法や薬物療法、場合によっては環境調整を組み合わせた治療を進めています。

薬物療法では、転換性障害に対する特効薬はほとんどないものの、緊張感の軽減や不安の緩和を目的として薬の調整・投与を行います。心理療法では、物事の捉え方を見直し、現状に即したストレス対処法を一緒に考え、実践できるよう支援します。また、環境調整についても、患者さんの現在の生活環境を見直し、改善できる部分を共に検討しながら治療を進めていきます。

転換性障害と仕事について

転換性障害を持ちながら労働継続や新たな仕事を始める際、心理的、社会的ストレスに適切に対処できるかが非常に重要です。単独で不安やストレスに対処しようとするのではなく、専門家や身近な人たちへの適切な相談が鍵となります。

転換性障害は治療後も再発の可能性があるため、定期的な相談や常に支援を受けられる環境の確保が大切です。また、不規則な生活は心身へのストレスを増大させるため、規則正しい生活を送ることが望ましいです。これらの点を意識しながら、転換性障害を抱えつつも充実した社会生活を送る努力が求められます。

 

監修:こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)