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病気不安症とは

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■病気不安症とは?

病気不安症は、「自分が病気に罹っているかもしれない」という強い不安を持つ状態を指します。従来の診断基準DSM-IVでは身体表現性障害の一部でしたが、最新の診断基準DSM-5において「身体症状症及び関連症群」として分類されています。この症状は、患者が何らかの身体的な兆候を感じ、医療機関でその不安が十分には払拭されなかったと感じることから、不安が強まり、思考、感情、行動に影響を与える形で現れるとされています。

 

病気不安症の特徴は?

病気不安症の特徴として、精神的な不安だけでなく、身体症状を伴う場合があります。これらの身体症状は軽微であることが多く、稀なケースを除けば、問診や一般的な検査の結果、患者さんが心配している病名や不安とは大きく異なる結果が示されることがほとんどです。
また、病気不安症の多くは身体症状を伴いますが、一部には身体症状が見られない患者さんも存在します。

病気不安症の症状

病気不安症は、自分の健康状態に対する不安から次のような症状が見られます。

■自分は何かの病気ではないか
■何かの病気にかかりそうだ
■自分は重大(命を脅かすような)病気にかかっているに違いない
■とにかく身体がだるい
■吐き気
■動悸
■胸痛
■胃痛
■発熱
■嘔吐
■脈が飛ぶ
■耳鳴り
など

 

病気不安症の原因

病気不安症の発生原因はまだ完全には解明されていません。ただ、心理的あるいは社会的な重大なストレスや、深刻な病気からの回復後に無事に生活しているという経験が関連していると考えられています。さらに、幼少期に虐待を受けたり、生命を脅かすような出来事に直面した場合も、この症状が発生しやすいとされています。

病気不安症の診断基準

病気不安症の診断基準には、下記の項目が挙げられます。
 自分に深刻な病気がある、またはあると思っている(思い込んでいる)
 身体症状はない、または軽微な身体症状がある
 自分の健康状態に対して強い不安がある
 健康に関して過剰なほど積極的に何らかの行動をしている
(例:喉の状態を毎日鏡で確認する、健康状態に関して複数医療機関で確認する)
あるいは、健康に関して全く関心なく、行動を起こさない
(例:推奨される診察も受けに行かない)
 病気に関するとらわれが6か月以上継続している
 病気に関するとらわれは他の精神疾患(うつ病やパニック症、強迫症など)では説明できない

病気不安症の治療方法

病気不安症の患者さんが精神科や心療内科を訪れる際、初診で精神的な疾患を予想しているわけではありません。多くは「何か重い病気にかかっているのでは」との不安から、まずは内科や外科などの一般診療科を受診し、精密検査を受けることが一般的です。しかし、「検査で異常が見つからない」という結果を受け、その後に精神科・心療内科へと来院されることが多いです。これは、日常のストレスの蓄積と、病気への不安が増大している状態で、疲労や徒労感を感じていることが理由です。
患者さんの多くは「様々なところで調べても異常はないと言われるが、それでも心配」と訴え、病気による生活への影響や将来への不安を抱えています。このような状況を鑑み、患者さんの不安を和らげることが、治療において重要な要素となります。

病気不安症の改善に向けて

病気不安症は、非常に慢性化しやすい疾患として知られています。この病気を抱える人は、自分が感じている苦しさや不安を理解してもらいたいという強い思いを持っています。しかし、周囲の人々からその気持ちが十分に理解されない経験を繰り返すことで、不安感や恐怖心がさらに強まる傾向があります。これにより、症状が悪化し、病気のスパイラルに陥りやすくなります。
特に、「ドクターショッピング」と呼ばれる行動が問題視されています。これは、異なる医師を次々に訪ね歩く行為を指し、一見すると解決策を探すための努力のように思えますが、実際には症状を強化する原因となることが多いです。異なる医師の見解が一致しない場合、患者さんの不安がさらに増幅され、悪循環に陥ることがあります。
改善への鍵は、信頼できる主治医を見つけ、その医師との継続的な治療を早期に開始することです。一人の医師と長期間にわたり信頼関係を築くことで、安定した治療が可能となります。また、主治医に自分の不安や症状について率直に話すことは、治療の効果を高める重要なステップです。
さらに、心理療法や認知行動療法などの治療法を取り入れることも有効です。これらのアプローチでは、患者さんが抱える不安の背景や考え方のクセを見つめ直し、症状を軽減するためのスキルを学ぶことができます。また、家族や友人のサポートを得ることも回復の助けとなります。
病気不安症の改善には、焦らずに長期的な視点で治療に取り組むことが大切です。自分自身を責めるのではなく、少しずつ前進する努力を続けることで、より良い日常生活を取り戻すことが可能です。

 

監修:こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)