■パニック障害になりやすいのはどんな人ですか?
パニック障害は決して珍しい病気ではありません。日本では、約1%の人がパニック障害と診断されており、これは100人に1人の割合です。しかし、繰り返しパニック発作を経験しながらもまだ診断を受けていない人が多くいるため、実際にはもっと多くの人がこの障害に苦しんでいる可能性があります。
多くの場合、パニック障害の症状や発作によって転職や外出制限が生じ、日常生活が大きく制限されることもあります。発作が恐怖の原因となり、やりたいことができなくなるなど、生活に支障をきたしています。これらの症状が生活に影響を与え始めたら、医療機関に相談することが重要です。
パニック障害の診断は
パニック障害は、突然の激しい恐怖や不安を伴うパニック発作が特徴の病気ですが、診断に至るまでには慎重な検査と確認が必要です。この病気は、時に不整脈や甲状腺機能亢進症などの身体的な疾患と誤解されることがあります。そのため、まずは内科的な異常がないことを確認することが重要です。具体的には、血液検査や心電図などの検査を通じて、身体疾患の可能性を排除します。これにより、身体的な病気による症状ではないことを確認します。
さらに、薬物やその他の外的要因が症状の原因となっていないことも判断材料となります。例えば、一部の薬物やカフェインの過剰摂取が似た症状を引き起こす場合がありますが、これらが原因でないことを確認した上で診断が進めます。
パニック障害と診断されるには、以下の条件を満たすことが求められます。
■パニック発作を繰り返し経験していること
この発作は突発的に起こり、動悸、息切れ、発汗、震えなどの身体症状を伴うことが一般的です。
■発作が再発することを恐れる予期不安が続き、その結果、日常生活に支障をきたしていること
例えば、外出を控える、混雑した場所を避けるなど、生活の質が大きく損なわれている場合が該当します。
■これらの症状が他の精神疾患や身体的な疾患では説明できない
うつ病や不安障害など、類似した症状を持つ精神疾患が存在するため、これらを正確に区別する必要があります。専門医による詳細な問診や診断基準に基づいた評価が不可欠です。
適切な診断と治療を受けることで、パニック障害の症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。症状に心当たりがある場合は、早めに専門医に相談しましょう。
パニック障害になりやすい年齢
10代後半から30代の方で発症することが多いといわれており、60代以降の方の発症は少ない傾向にあります。
パニック障害になりやすい人の性格
パニック障害は女性に多く見られ、男性に比べて2〜3倍の割合で発生するとされています。この障害は特に10代から30代の間に多く見られますが、男性でも発症することは珍しくありません。
パニック障害を発症しやすい人は、ストレスに敏感な性格であることが多いとされていますが、それが「打たれ弱い」や「心が弱い」という意味ではありません。主に次のような特徴があるとされています。
- 完璧主義
- 感受性が高い
- 繊細
- もともと緊張や不安になりやすい
- 周りの人に配慮して気遣い上手
- こだわりが強い
完璧主義
完璧主義な性格であるため、物事を徹底的に正確に行おうとする傾向があり、自分自身に過度の負担をかけてしまうことが多々あります。この性質から、任された業務や責任を完璧に果たそうと努力しますが、小さなミスがあった場合でも、うまく行かなかった点に焦点を当てがちで、それがストレスの原因となることがあります。
感受性が高い
美しい景色や楽しいイベントなどに対して、普通の人よりも強い感動や喜びを感じやすい特性があります。同様に、他者の苦しみや悲しみに対しても深く共感する心を持っています。このような感情の激しい変動が頻繁に発生することで、感情がジェットコースターのように急激に変わり、それが原因でストレスが蓄積することもあります。
繊細
他人の感情に敏感であり、悩んでいる様子やイライラ、怒りといったネガティブな感情を素早く察知する能力があります。このため、相手が不機嫌や怒りを感じていると、それを何とか解消しようとするために気を遣うことが多くなります。しかし、自分自身が他人からイライラや怒りを向けられたときは、それを大きなショックと受け止め、強いストレスを感じることがあります。
もともと緊張や不安になりやすい
昔から、重要な時に失敗するかもしれないという恐れから、本番に臨む際の緊張や不安が強くなる傾向があります。このような状況で失敗を避けようと念入りに準備を重ねることが、逆に過剰にネガティブな思考を引き起こし、実際には何も悪化していないにもかかわらず、大きなストレスを感じる原因となることがあります。さらに、良い面と悪い面の両方がある状況に直面したときには、悪い面ばかりが気になって、その結果、ストレスを抱えやすくなってしまうことも指摘されています。
周りの人に配慮して気遣い上手
周りに対して気遣いができる人は、他人が困っているときに積極的に問題解決に協力し、情に厚いと評価されることが多いです。このような人は、他者の問題に対して積極的に関わり、自分自身の辛さを抑えて対処を続けることがあります。この「過剰なサービス」は、他人からの評価が高くなる反面、自己の感情を抑圧してしまうことで、内心では大きなストレスを感じることがあります。さらに、自分自身だけでなく、普段から接する他人の問題までも気にかけてしまうため、ストレスが積み重なっていきます。
こだわりが強い
強いこだわりを持つ人は、自分の才能を発揮できる状況で顕著な成果を上げ、仕事に対する満足感や喜びを感じることがあります。その結果、周囲からは「非常にできる人」と称賛されることも少なくありません。このようなこだわりは、仕事上で非常に有益に働くことがあります。しかし、自分のこだわりに固執しすぎると、対応できない状況が生じた際には不安や焦り、喪失感を感じることがあります。これらの感情は、同じような状況を避けようとする心理を強め、時には過去の出来事に固執したり、類似した状況に遭遇することへの嫌悪感を抱くこともあります。
私たちは社会のルールや習慣の中で生活しており、日常の多くの事柄は習慣化され、避けることができない場面も多いです。こうした環境での強いこだわりは、悪循環を引き起こす可能性があります。状況を理解しつつも、「わかっているが、だが、しかし…」と自問自答が続くことで、ネガティブな感情が深まり、イライラが積み重なり、自信を失ってしまうこともあります。これらは、大きなストレスとなりえます。
性格以外にも、他の要因で発症することも
パニック障害は単なる性格の問題ではありません。性格が原因でストレスを内に溜め込みやすい人もいますが、パニック障害の発症は多くの要素が組み合わさっています。
仕事量の増加、職場や家庭内の人間関係の問題、住居や職の変更、身近な人との別れなど、心理的、環境的な要因が影響します。さらに、遺伝的な要素や他の精神疾患との関連も考えられます。これらの要因を理解し、適切に対処することが、パニック障害の治療計画を立てる際には重要です。
監修:こころとからだのケアクリニック人形町 院長 益子 雅笛(ますこ みやび)