■認知症の人にやってはいけないこととは?
認知症を患うと、日常生活に必要な判断力や記憶力、理解力が大きく低下することがあります。認知症の方を「できない理由」で叱ったり、イライラしたりしても、その結果患者さんが心を閉ざしてしまい、症状や人間関係がさらに悪化するだけです。これを避けるために、以下の点に注意しましょう。
- 〇何もさせない(取り上げる)
- 〇行動を制限させる
- 〇子ども扱いする
- 〇命令する
- 〇叱る
- 〇強制する
- 〇不安・心配をかける
■認知症の人に怒るとどうなる?
認知症により記憶力や判断能力が衰えているからといって、「怒ってもすぐ忘れるだろう」と思っていませんか?それは誤解です。認知症の方も「怒られた」「恐怖を感じた」「悲しみを感じた」といった感情の記憶はしっかりと残ります。
研究によると、このような負の感情は脳にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、ストレスは脳内で微小な炎症を引き起こすことも指摘されています。また、家族間の関係性においてもこのような対応は望ましくありません。ですから、「どうせ忘れる」という考えで怒るのではなく、伝え方を工夫することが重要です。
■認知症になりやすい人とはどんな人?
認知症になりやすい人の中には、特定の口癖や日常の生活習慣が影響していることがあります。次に挙げる特徴に自身が該当しているかどうか確認してみてください。もし当てはまる項目があれば、可能な範囲で徐々に改善を図ることがおすすめです。
★認知症になりやすい人の口癖
認知症のリスクが高い人は、柔軟な思考が難しく、考え方が固定化していて変化への対応が苦手なことが指摘されます。例えば、「それも一理あるが、違う可能性もある」というような曖昧な思考をすることが難しくなります。特に社会や時代の変化に適応することが困難で、そのために個人が直面する課題への対応が難しくなっていることがあります。
- 〇今の若い人は…
- 〇昔は○○だったのに今は…
など
★認知症になりやすい人の生活習慣
認知症のリスクが高まる生活習慣には、睡眠不足、偏食、昼夜逆転の生活パターンが含まれます。さらに、一人暮らしや過度のアルコール消費も認知症になりやすいとされています。
一人暮らしでは、すべてを自己管理することが可能で、一見すると認知症予防に有効に思えますが、特に都市部では人とのコミュニケーションが減少する傾向にあり、これが孤立を引き起こしやすくします。このような孤立は、認知症の進行に繋がると言われています。また、認知症の初期症状がある場合、近所との小さなトラブルが関係悪化の原因となり、結果として社会的な引きこもりを促すこともあります。これがさらなる認知症の進行に影響を及ぼすことが懸念されます。
アルコールに関しては、過度の摂取が脳血管疾患などのリスクを高め、これも認知症の発症につながりますので、適度な摂取が重要です。
★認知症になりやすい人の性格
認知症のリスクが高い人の性格は、協調性が低く、周囲の人と活動することに消極的であったり、イライラしやすく、神経質であることが挙げられます。
これらの性格は、他人とのコミュニケーションや協力の機会を減少させる原因となり得ます。特に神経質な人は、些細なことでストレスを感じることが多く、うつ病になりやすいと言われています。うつ病は認知症とも密接に関連しているため、こうした性格の方は、悲観的になり過ぎないよう意識し、物事をポジティブな視点から捉える練習などを行うことが良いかもしれません。
■認知症になったらやるべきことは?
多くの人が「認知症」という用語は知っていますが、自分や家族が実際にその診断を受けた場合、これからの生活がどうなるのか具体的なイメージが湧かないことが多く、不安を感じることでしょう。これからの話では、認知症と診断された方々とその家族が感じるであろう不安を少しでも和らげるための情報をお伝えします。
■認知症と診断されたら介護認定を受けましょう
認知症と診断された際は、介護認定の取得を検討しましょう。介護認定を受けることにより、介護保険のサービスを利用できるようになります。
現在は自立して生活できているかもしれませんが、認知症は徐々に進行する病気であり、日常生活の自立度は個人の状況や周囲の環境に左右されます。このため、自身が自立して行動できるうちに、必要な手続きを済ませることが望ましいです。また、ご家族が認知症になった場合にも、同じ対応が求められます。現時点で活動的で自立しているとしても、将来的に介護が必要になる可能性があるため、初診時に介護認定の取得をお勧めします。これにより、介護が必要になった際には、患者さんもご家族も落ち着いて必要なサポートを受けられる状態を整えることができます。
★介護認定の流れ
- 1介護認定を申請する際は、まず認知症を診断した医師に主治医意見書の記載を依頼します。
- 2追加検査が必要な場合がありますので、詳細は医師に確認してください。
- 3主治医意見書が完成したら、市区町村の介護保険担当窓口にて申請手続きを行います。
- 4地域包括支援センターに事前に問い合わせをしておくと、申請がスムーズに進むためお勧めです。
- 5申請後、調査員が実際に患者さんの自宅などを訪問し、状況を確認します。
- 6全ての調査が終了し、認定審査会での審査を経て、認定証が発行されます。
※認定証の発行には申請から約2カ月程度かかるため、申請は余裕を持って行うようにしましょう。
監修:こころとからだのケアクリニック人形町 院長 益子 雅笛(ますこ みやび)