ブログ

(脳)血管性認知症とは

local_offer認知症

■脳血管性認知症とは?

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳の血管障害を原因として発症する認知症です。アルツハイマー型認知症に次いで発症例が多く、全体の約3割を占めるとされています。この認知症は高齢者だけでなく、脳血管に障害を持つ若年層にも見られることがあり、若い世代では『高次脳機能障害』と診断される場合もあります。

 

脳血管性認知症の初期症状とは?

脳血管性認知症の初期症状には、幻視や情緒不安定、せん妄などが見られます。
初期段階において認知症特有の物忘れが目立たないことが多く、一方、物事を遂行する際に手順通りに進めることが難しいという特徴があります。例えば、着替えの際にズボンを下ろす動作やボタンを留めることがうまくできなくなる、飲食は問題なく行えるものの、目の前の湯飲みを水やお茶を飲む道具だと認識できなくなるなどの例があります。こうした症状に対しては、患者さん自身が『なぜできないのか』『なぜわからないのか』と混乱し、不安や苛立ちを感じることが少なくありません。そのため、ご家族だけで対応するのではなく、専門家の支援を受けながら患者さんとの良好な関係を築いていくことが大切です。

脳血管性認知症の特徴

脳血管性認知症の特徴のひとつに、症状がまだらに現れることがあります。たとえば、1日の中でも体調や記憶機能に大きな変動が見られたり、判断力は保たれているものの記憶力が低下しているといったケースが挙げられます。また、この疾患には、損傷を受けた脳の部位に対応する機能だけが低下するという点も特徴です。

脳血管性認知症の原因

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で発症します。また、このような脳血管障害の危険因子として、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が関与していることが指摘されています。こうした日々の小さな影響が積み重なり、脳血管が次第に損傷を受けることで、認知症が徐々に進行していく場合もあります。

 

■脳血管性認知症と心房細動について

 

近年、脳血管性認知症と心房細動の関連性が注目されています。どちらも加齢に伴い発症リスクが高まる疾患であり、その関係性を明確に解明することは難しいものの、脳血流の低下や神経細胞の障害、さらに心不全治療で使用される抗凝固薬の影響が関与していると考えられています。

現時点で明確な結論は出ていませんが、いずれの疾患においても、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が重要な要因となるため、まずは基本的な生活習慣を見直し、整えることが大切です。

 

■脳血管性認知症の検査

脳血管性認知症の検査では、頭部MRI検査やCT検査を用いて、脳内のどの部位で血管が詰まっているかを確認します。さらに、SPECT検査やMRA検査を活用して脳の血流状態を調べることもあります。

 

■脳血管性認知症の治療

脳血管性認知症には、現時点で根本的な治療法は確立されていません。しかし、脳血管の障害が原因となるため、再発を防ぐための予防やリハビリを行うことが重要です。また、脳血管に負担をかける高血圧や糖尿病などの生活習慣病に対して継続的な治療を行い、規則正しい生活を心がけることも大切です。

さらに、初期段階で認知症を自覚した患者さんの中には、できていたことができなくなるストレスや不安から抑うつ症状を引き起こすケースもあります。そのような場合には、抗うつ薬の使用など、患者さんの状態に応じた治療が必要です。

当院では、精神科・心療内科のクリニックとして、患者さんとご家族の身体と心の両面に寄り添ったケアを提供しております。認知症や物忘れに関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

 

■血管性認知症の早期発見と進行を抑えるポイント

血管性認知症は脳の血流障害が原因で発症するため、早期発見と治療が進行を抑える鍵となります。以下にそのポイントをまとめました。

1. 早期発見の重要性

血管性認知症の初期症状には、記憶力や集中力の低下、歩行の不安定、気分の変動などがあります。これらの兆候を見逃さず、専門医に相談することが重要です。

2. 適切な治療法

治療は、脳の血流改善と基礎疾患の管理を中心に行います。

〇基礎疾患の治療:高血圧や糖尿病のコントロールが不可欠です。

〇抗血栓療法:脳梗塞の予防に効果的な薬物治療を行います。

〇生活習慣の改善:適度な運動やバランスの取れた食事が血流改善に寄与します。

3. 家族や専門機関のサポート

 

治療に加え、認知リハビリや家族の支援、デイケアサービスを活用することで、患者さんの生活の質を向上させることができます。


早期診断と適切なケアを行うことで、血管性認知症の進行を緩やかにし、より良い生活を送るサポートが可能です。疑わしい症状があれば、早めに専門医に相談しましょう。

 

監修:こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)